さよならの日。

だんだん外が明るくなってきた。

お別れの時間がどんどん近づいてくる。

あと数時間しかない。

カラカラカラ、と看護師さんがワゴンを引く音が廊下に響き渡る。

朝の回診も終わり、子宮の診察も終わった。

エコー映像にはベビたんの姿がなかった。

当たり前。分かっとったけど、

この寂しさがなんとも言えない。

検診中涙がこぼれた。

最後の別れまで病室でベビたんと一緒に過ごした。

1分1秒たりとも無駄にしたくなくて。

こんなに時間を惜しむこと、大切に思うことなんて今まであったやろか。

ベビたんが隣にいるだけで幸せな気持ちに溢れた。

これが毎日続いたなら。

どんだけ幸せを感じれたやろか。

歯を磨きながら、顔を洗いながら、髪をセットしながら…

やってることはいつもと変わらんのに、

我が子が隣におるだけで、ママの気分になっちゃって。

思わず鼻歌を歌ってた。

このままおうちに連れて帰りたかった。

このままずっと一緒におりたかった。

それでも時間は待ってくれることなく、どんどん進んだ。

そして朝9:30

葬儀屋さんが来た。

渡したくなくて、ベビたんを抱えた。

彼が別室で葬儀屋さんと色々取り合ってくれた。

その間、ずっとずっと

ベビたんを抱きしめた。

止めどなく溢れる涙。

声をあげてたくさん泣いた。

これで最後。

そう思うと悲しい。

わたしの赤ちゃん。

"離れたくない"

そう自然と言葉に出た。

葬儀屋さんと共に彼が戻ってきた。

数分、

いや、もっとかも知れない。

ベビたんを抱きしめたまま

止まらない涙を流しながら

目の前に用意された棺へ手を伸ばすことができず。

やっと出逢えた我が子を手離すなんてできるはずない。

彼は強いのか、わたしの前だから強くいてくれたのか。

涙も流さず、ずっとわたしの背中を摩りながら見守ってた。

意を決して、ベビたんと最後のお別れをした。

ごめんねとありがとうをたくさん伝えた。

ママのところに来てくれたこと、

ママはずっと側にいること、

お腹の中にいた頃の様に元気で飛び立ってね。

"大好きだよ"

最後にギュッと強く抱きしめて棺に入れた。

彼と一緒に葬儀屋さんが用意してくれた真っ白のお花と

夜に書いた手紙、折った折り紙を並べた。

ホントは良くないんかも知れんけど、

ホントは心だけにおさめとこうって思ってたけど、

葬儀屋さんからも"問題ない"とお言葉をもらったからベビたんの写真を撮った。

(今では撮っといて良かったって思う。

絶対後悔したはずやから。)

"2人で閉めて下さい"

そう葬儀屋さんから言われて棺の蓋を渡された。

しばらく閉められんかった。どうしても。

"もう少しだけ。もう少しだけ。"

ベビたんをこれでもかっていうくらい焼き付けた。

そして2人で蓋を閉じた。

葬儀屋さんが風呂敷で包み両手で抱え部屋を後にした。

わたしは見えなくなるまでお辞儀をした。